「うちは製造業で、一般の消費者は一人も来ないからカスタマーハラスメント(カスハラ)なんて関係ないよ」
「ネット通販専門で店舗がないから、対面のトラブルは無縁ですけど…」
もし、このように考えているとしたら、それは危険な経営リスクを放置していると言わざるを得ません。
近年、社会問題化しているカスハラ。
テレビやニュースで報じられるのは、飲食店や小売店、公共交通機関といった「BtoC(消費者向けビジネス)」の現場における土下座の強要や、大声での恫喝なので、そのイメージが強いと思います。
しかし、
「お客様が来店しない業種」「BtoB(企業間取引)企業」こそ、実は陰湿で深刻なカスハラの温床になっており、対策の遅れで致命的な人材流出を招いているのです。
また、昨年6月に成立した改正労働施策総合推進法により、今年の10月から、すべての中小企業に対してカスハラ対策(雇用管理上の措置)が完全に義務化されます。
※従業員を1人でも雇用していれば、例外なく初日から義務が課されます。
法改正を乗り切るたに、どのような具体策が必要なのでしょうか?
そもそも「カスハラ」の定義とは?
法改正への対策を把握する前に、まずは今回の法改正で定義された「カスハラ」を正しく理解する必要があります。
厚生労働省の指針において、カスハラは以下の3つの要件をすべて満たすものと定義されています。
「 法律上のカスハラ3要件」
1.職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(顧客等)の言動であること
2.その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであること
3.労働者の就労環境を害するものであること
(出典:政府広報オンライン「カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容」)
ここで最も注目すべきは、1つ目の要件にある「取引の相手方」という文言です。
法律は、一般消費者だけでなく、企業間の取引先からの不当な言動も明確にカスハラの対象に含めています。
つまり、「BtoBの取引先からの過度な要求」も、立派なカスハラ(取引先ハラスメント)なのです。
経営者や幹部の方が犯しがちな最大の誤解は、「お金を払ってくれる取引先からの要求は、多少無理でも呑まなければならない」という昭和型の商習慣を引きずっていることです。
今年の10月以降は、それらを放置する企業自体が「法律違反」を問われるリスクを背負うことになります。
カスハラの実例
実例① ステルス型カスハラ
元請け企業の購買担当者(40代)から、毎回のように物理的に不可能な短納期を強要される。
元請け側の都合による設計変更でも、追加費用を一切認めないだけでなく自社の担当が、夜遅くまで執拗な電話やメール対応に追われ、精神的に追い詰められ退職となった。
経営者が気づかないうちに、若手社員が潰されていくというケース。
実例② 執拗な電話爆撃型カスハラ
「届いた荷物の段ボールに少し凹みがあった」というクレーム。
中身の品質には一切問題がなかったものの、その顧客は「品質への自覚があるのか!」「誠意を見せろ!」と激高。
それから毎日、1回あたり1時間を超える電話が会社に何度もかかってくるようになり、「社長を出せ」「担当者をクビにしろ」という要求がエスカレート。
少人数のバックオフィス(総務・事務)が集中砲火を浴びて機能不全に陥ったケース。
お客様が来ない業種であっても、実例のようにメール、電話、そして「取引関係(上下関係)」というツールを通じて、カスハラが確実に発生します。
対策すべき「4つの法的措置」
改正法において事業主に義務付けられる基本的な枠組みは、主に以下の4つです。
措置①:トップによる「カスハラ拒絶」の方針明確化と周知
措置②:相談窓口の設置と「対応マニュアル」の策定
措置③:被害を受けた従業員への事後ケア
措置④:プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
「何かあったら社長に言ってくれ」では、カスハラには対処できません。
社長(または上司)に心配をかけまい、くれぐらいなら未だ対処できると問題を抱え込んでしまうからです。
どの段階の何が起きたら、トラブルとして社長(または上司)に報告するのか、明確な判断基準を設定する必要があります。
判断基準が明確であれば、対処方法も準備できることができます。
(例)長時間の電話への対応
30分経過した時点でカスハラと判断し、強制的に電話を切る
「他のお客様のご対応もございますので、本件に関するお電話は弁護士が対応させていただきます」と応答する…など。
「売上の8割は、2割の優良顧客からもたらされ、トラブルの8割は、2割の不良顧客からもたらされる」というもの
があります。
利益率が極めて低いにもかかわらず、要求ばかりが過酷で、自社の従業員を疲弊させている取引先は、本当に維持すべきでしょうか?
今回の法改正を機に、取引先を評価し、カスハラ気質の強い取引先に「値上げを要求して」関係を消滅させ、自社を大切に扱ってくれる新しい優良顧客の開拓に向けてみませんか?
健全な企業体質を作り、従業員を守り、会社を伸ばす投資とは、まさにこの事です。
笑顔創造研究所は、みなさまの笑顔と地域経済を応援しています。




