目的と目標の違いを改めて認識する

「今月の売上目標はあと300万円だ」

「利益率をあと2%改善しよう」

「新規顧客を10社獲得する」

 

経営者や管理職であれば、このような言葉を毎日のように口にしていることでしょう。

 

もちろん、会社経営において売上や利益は欠かすことのできない重要な指標です。

 

しかし、

 

それらだけを追い続けている企業ほど、ある日突然、優秀な社員が辞めたり、組織がまとまらなくなったりするケースが少なくありません。

 


一方で、給与水準が決して高いわけではなくても、「この会社で働き続けたい」と社員が口を揃える企業も存在します。

 

この違いはどこから生まれるのでしょうか。

 

 

その答えの一つが、「目的」と「目標」の違いを理解しているかどうかです。

目的と目標は似ているようで全く違う

経営相談をしていると、多くの経営者や経営幹部が、「目的」と「目標」を混同しているケースが多いと感じています…。

 

まずは両者の違いを整理してみましょう。

 

目的とは、会社が存在する理由や社会に提供する価値です。

 

目的の例として、

「地域のものづくり企業を支え、日本の製造業を元気にする」

といった存在意義や経営理念といったものとなります。

 

一方で、目標とは、

その目的を実現するための具体的な内容です。

(例として、売上や利益目標、顧客獲得数など)

 

つまり、目的が目的地であり、目標はそこへ到達するための道標なのです。

 

ところが、

 

多くの企業では売上や利益という目標だけが独り歩きし、本来の目的が社員に伝わっていません

特に注意したいのが、優秀な経営者ほどこの罠にはまりやすいことです。

 

自ら会社を成長させたカリスマ経営者は、「結果を出すこと」が当たり前になっています。

そのため、

「売上が足りない。」

「利益をもっと出せ。」

「あと○件契約を取れ。」

という目標ばかりを社員へ伝えるようになります。

 

経営者本人は、

「会社を守るため」

「社員の生活を守るため」

という目的を心の中では持っています。

 

しかし、それを言葉にして伝えても、社員には伝わりません。

 

社員から見えるのは、

「数字しか見ていない社長」

という姿だけになります。

 

すると社員は次第に、

「私は売上を作るための駒」

「利益を出すためだけの働きバチ」

と感じ始めます。

 

自分が数字として扱われていると感じた瞬間に、仕事への誇りを失います。

さらに優秀な社員ほど、「自分を必要としてくれる会社がある」と、転職を選択する傾向があります。

 

実際、多くの退職理由として挙げられるのは給与だけではありません。

 

「仕事の意味を感じられない」

「会社の方向性が見えない」

「何のために頑張ればいいか分からない」

 

こうした理由が積み重なった結果、離職につながっていいます。

目的の大切さを象徴する有名なエピソード

ある日、工場を見回っていた社長は、一人の社員が黙々と電球を磨いている姿を見つけました。

 

「君、ええ仕事をしてるなあ…」

 

そう声を掛けられた社員は、不思議そうに答えます。

 

「私は毎日、電球を磨いているだけです。誰にでもできる単純な仕事ですよ。」

 

するとその社長は、こう語ったと伝えられています。

 

「君が磨いているのは電球やない。夜でも子どもたちが勉強できるようになるんや。

女の人が暗い夜道を安心して歩けるようになるんや。人々の暮らしを明るくしているんや。

君が磨いているのは、人の幸せであり、子どもの夢なんや」

 

この言葉を聞いた社員は、自分の仕事を見る目が変わり、その後は誇りを持って仕事へ取り組むようになったといわれています。

 

松下幸之助の逸話として広く語り継がれている「電球を磨く社員」の話です。

 

この逸話が伝えている本質は、「仕事は作業ではなく、その先にいる誰かの役に立っている」ということです。

つまり、「何をするか」よりも、「なぜそれをするのか」を共有することが、

 

人材定着や生産性向上につながることが、多くの研究や企業実践からも示されています。

※「パーパス経営」や「ジョブ・クラフティング」という概念として実践されています。

中小企業こそ目的を言葉にして伝えるべき

中小企業では、一人ひとりの仕事が会社全体へ与える影響が大きいからこそ、仕事の意味を伝えることが重要です。

 

例えば、部品を加工している社員には、

「機械部品を作っている」のではなく、

「人の命を守る機械を支えている」

 

包丁を研いでいる職人には、

「刃物を研いでいる」のではなく、

「料理人がお客様へ最高の一皿を届ける手助けをしている」

 

品質検査を担当する社員には、

「検査している」のではなく、

「事故やクレームを未然に防ぎ、お客様の安心を守っている」

 

このように「作業」を「社会への貢献」という言葉へ置き換えるだけで、社員が仕事に対して抱く意味は大きく変わります。

 

もちろん、会社経営において目標は必要です。売上も利益もなければ会社は存続できません。

けれども、社員は「数字」のためだけに働くのではありません。

 

「誰かの役に立っている」という目的のために努力し、

「会社の理念に共感できる」という安心感の中で力を発揮します。

 

だからこそ、経営者が最初に語るべきことは、「今月の売上」ではなく、

「私たちは誰を幸せにするために存在しているのか」という目的です。

 

経営者や経営幹部は、目標を管理するだけではなく、目的を語る存在であるべきです。

 

「会社は、なぜそれをするのか?」

 

この問いに明確に答えられる企業ほど、社員は誇りを持ち、お客様からも選ばれ、

変化の激しい時代を力強く成長していくことでしょう。

 

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